寸劇:スペース隠蔽ダー

侵略者:「我はスペース隠蔽ダー。世のうしろめたい者たちの味方なり」
侵略者:「まずはお前の出自を隠蔽してやろう」
私:「おお、親切な方よ。たしかに私は出自に自信がありません」
私:「しかし、わざわざ隠すほどのことでもありません」
侵略者:「遠慮は無用にねがおうか。隠蔽は我の糧なれば」
私:「怪しげな御仁よ、余計なお世話です」
侵略者:「ええい、四の五の言わせぬ。隠蔽虚光線シュビドゥバー」
私:「なんということだ、自らの出自がわからず不安この上ない」
侵略者:「貴様の不安、我には極上の美酒」
侵略者:「ついでに、お前の愛する者の消息を隠蔽してやろう」
私:「これ以上まだ何かするのか、もうやめてくれ」
侵略者:「抵抗は無駄だ。隠蔽虚光線シュビドゥバー」
私:「ああ、あの人はいまどこでどうしているのだろう。会いたい」
侵略者:「胸を焦がす炎に焼き尽くされるがよいわ」
侵略者:「最後の仕上げに。隠蔽の事実を隠蔽してやろう」
私:「記憶が無くなろうとも、心はお前のしたことを決して忘れぬぞ!」
侵略者:「楽になれるのだ、感謝してもらいたいものだ」
侵略者:「隠蔽虚光線シュビドゥバー」
私:「私は、なにをしていたのだろう」
私:「劣化ウランの様に重かった心が、今はタンポポの綿毛のようだ」
私:「しかし、なにか引っかかるものがある」
私:「それが何かはわからない」
私:「そのことについて考えると、ぶつけようの無い怒りと憎しみがわいてくる」
私:「そのことを忘れて、見せかけの自由を謳歌するのも、なにか空しい」
私:「私はいつか、大きな謎と対峙しなければならないのだろう」
侵略者:「くっくっく、我の封印を破れるものならやってみるがいい」

現実に続く